
彼はフィリピンに住む日本人詐欺師に騙されましたが、腐らずに奮起しました。電柱に「和食弁当宅配します。S弁当」という張り紙をして、弁当で稼ごうとしました。
お金は日本人詐欺師に取られていまいましたので、自分が住むアパートで弁当を作り、お客を募集して配達を考えたのです。
注文は携帯電話で受けますから、資金は必要ありませんでした。お金がなかったので、どうすればいいのか必死に考えた末の策でした。人間は追い込まれればいろんな知恵が湧くものです。
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フィリピンの詐欺師に騙されて復活できる日本人はごくわずか
弁当の宅配が大きく当たったわけではありませんでした。たまに駐在員や日本法人から十数個の発注がありましたが、発注がゼロの日もやはりありました。
それでもS氏はフィリピンという異国の地で、地道に弁当を作り続けました。すると少しずつS氏の弁当が評判になり、日系企業やフィリピン企業までも定期的に注文してくれるようになりました。
1人では配達できないほど注文があったので、フィリピン人を使って配達していました。
「今思えばこの時にフィリピンについていろいろ勉強しました。詐欺師にはめられて悔しい思いをしながらの仕事でした。例えば配達を頼むフィリピン人に、代金を受け取らせないとか…。
フィリピン人を信用しているしていないの問題ではなく、フィリピンのどの階層の人間を雇用するかによって、接し方が異なるってことなんです。
面倒ですけど1週間分たまったら、私が会社などに行って、売上金を回収しています。そうしないと足元を見られてしまうんですよ。この弁当の配達という仕事をしなかったら、居酒屋をオープンしても売上管理をフィリピン人に任せてしまったと思います。
そうすれば売上をごまかされるのはもちろん、仕入れの上乗せや、商品の持ち帰りなど、いろんな悪夢が待っていたと思います。
さらに給与の支払も自分で渡すのが大事だと思っています。フィリピンには階級がありますから、金を払う人が、金を受け取らないとダメなんですよね。
日本のように人任せに出来ないんです。そういったことが少しずつわかってきました。ですから日本人が普通に持っている習慣や考えを、少しずつ捨てていけました」と彼はしみじみ話します。
宅配弁当はほぼ1年間継続しました。宅配弁当を週に数回発注してくれる日本料理店の日本人から、料理人としてきてくれないかと言われました。
給料は日本円で13万円ほどです。それまではかなり生活を切り詰めて生活していましたので、S氏にすれば有り難い話です。彼は料理人として店に入りました。
後は店長として昇格し、給料も16万円に上がりました。自分の店を持つという夢は実現していませんが、生活は安定し余裕が出てきました。
「最近、店のオーナーからこの店を譲るからやらないかと言われています。実は凄く悩んでいます。この御店に拾ってもらって生活に余裕ができ、少しずつ貯金もしています。
もしやったすれば、もっと儲けることが出来ると思います。もう騙されませんからね。そろそろ夢が叶うかもしれません」
彼は少し興奮気味に話していました。
終
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